最近は移動する事が無いせいか本を読む機会が少なくなった。久しぶりに『八本目の槍』著 今村翔吾 を買って読んだ。戦国武将 石田三成の物語だ。
「人か何かと申候共、気二かけ候ましく候、うつけ共か色々事申候ハ、不入事候、」
意味:「人が何を言おうと気にすんな!色々と言われても無益な事だからな!」
嫌われ者、石田三成の名言である。
選手が活躍すると翌年には、その選手は移籍してしまうのは明白だ。弱小クラブに所属する選手はサラリーも安く、環境も悪いので少しでも良いクラブに行くことを望むのは当たり前の事であり常々、選手やスタッフ達にはそう言ってきた。
そして何故か移籍して行った選手に活躍され、負けてしまう事が多いのは不思議だ。
しかし、共に戦った選手やスタッフが活躍しているのは嬉しい。
Jリーグに参入した2014年は21位となり入替戦で辛うじてJ2に残留し、来期をどう戦うかを強化担当である 中島健太 と思索した。
予算のないクラブにとって補強できるのは移籍金0円選手とレンタル移籍選手だ。そして前年の反省から守備で計算のできる選手を獲得することになった。
2015シーズンからカマタマーレ讃岐はあの戦い方を始めた。
『堅守速攻』という言葉があるが、堅く守って速く攻める事はサッカーという競技にとって当たり前の事だと思う。その、当たり前の事を当たり前にやっただけである。
相手ボールを何処で奪って、何処のスペースが最短距離かに特化した分析を始めた。データスタジアム『ネットストライカー』で相手チームのボールロスト、ボールゲインをGKコーチである 平嶋裕介 と隈無く漁った。
いくら戦略を立てても試合をするのは選手達だ。選手達が理解して納得しなければ「机上の理論」で終わってしまう。『奪いに行く守備から待ち構える守備』に移行するのは大変な作業だったが、ピッチでの練習と映像を見る事で徐々に自分達のものにして行った。
その年はJ2最少失点で16位になり、前年の成績を大きく上回り、ボールを奪ってからゴールまでの平均速度も1位だった。しかし、得点は最少得点だったこともあり、讃岐は守備的なチームという評価を受けた。
守りを固めようと思って低い位置でオーガナイズしていたわけではない。低い位置で構えてると失点のリスクもあるが敢えてそうしていたのは何故か。
ボールを奪った時に広大なスペースを勝ち獲るためだ。選手もそれを理解してくれていた。
折しも『パスサッカー』という言葉が日本中に浸透していた。ショートパスサッカー=美しいサッカーになっていた。そもそも『パスサッカー』ってなんだろうか。
練習を見ていない解説者がロングパスを否定するとテレビを見ている人はそうだと思う。
ネットで引きこもりの縦ぽんサッカーと揶揄される。ホームのサポーターにまで言われる始末だ。心の中で『頑張ってくれ シメオネ』 と思ったものだ。
自分も悔しかったが、選手達はもっと悔しかったと思う。ロングパスだってパスだ。
翌年の2016シーズンは少しボール保持を増やしながらも同じ戦い方を継続した。
オシム さんに質問した時にカウンターで一番重要なことは「意思の統一」という言葉は今でも耳に残っている。
選手の特徴を最大限に生かせる戦略を考えるのが監督の仕事であり、その戦略を選手達に理解させる事でチームは機能するのだと思っている。
2015、2016シーズンはチーム全員が同じ意識で目標に向かってスペクタルなサッカーが出来たと思う。あの時のほとんどの選手とスタッフ達はチームも変わったが今も活躍をしている。その姿を画面越しで見ると嬉しくなり元気をもらえる。