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元監督が語る降格争いの深淵と強化部の仕事

この時期は優勝争いや、昇格争いもさることながら降格争いも取り沙汰されます。
当該チームの監督や選手、そして支えるファン・サポーターの皆さんは、本当にヒヤヒヤですよね。
この「ヒヤヒヤ」という言葉の裏には、生半可ではない重圧が隠されているのです。

思い返せば、長く監督をやってきましたが、一年目のロアッソ熊本以外は、ほぼ毎回、この昇降格争いの渦中に身を置いていました。

監督というものは、建前上は「目の前の試合に集中するだけ」「皮算用なんて考えるわけではない」と口にします。
私ももちろん、1試合1試合の勝点しか見ていない、そうありたいと願っていました。
しかし、それはです。
プロの世界で生き残るには、計算が不可欠です。
どの試合をターゲットにして、最低限何ポイントを積み上げるか、どのチームに引き分け以上でOKとするか、順位表の裏側まで透かし見るように計算はしていました。
勝点を落としていい試合など一つもありませんが、「リスクを冒して勝ちに行くべき試合」と「泥臭くても引き分けで満足すべき試合」は明確に区別していました。

シーズンが終盤に差し掛かると、計算はより複雑になります。
直接対決の勝点6の重み、他会場の途中経過、そして何より選手の心理状態が関わってきます。
例えば、上位チームと戦う場合、世間の評価は「負けても仕方ない」ですが、チームの内部では「ここで勝点1でも取れれば、次節ホームでの直接対決に大きな弾みがつく」という計算が働きます。

ただ、計算違いは必ず起こるものです。
アディショナルタイムの失点、不可解なレフェリー判定、不可避な怪我人…。
計画通りにいかないのがフットボールの常です。
予定外に落とした勝点を、どうリカバーするかがポイントになります。
一週間のトレーニングからもちろん、頭の中でも試合のシミュレーションの連続でした。

どんな対策にするか、どの選手をスタートにして、どの選手をどのタイミングで投入するか。
これに加えて、天気の状況、芝生の状態、レフェリーは誰か、そしてそのレフェリーの過去の判定傾向まで、徹底的に考え抜くのです。
特に降格争いの終盤は、順位の状況が見えるわけですから、頭の中は常にパニックです。
勝利の女神に必死に祈りながら、極めて論理的な判断を下さなければならない。
この矛盾こそが、監督業の醍醐味であり、胃をキリキリさせる原因でもあります。

新しいシーズンを迎えるとき、「今年こそは華麗なパスサッカーで優勝争いをしたい」と、誰もが思うわけですが、結局、最後はいつもと同じで切羽詰まって、泥臭い勝点争いに身を投じることになります。

特にカマタマーレ讃岐での長い監督時代は、その戦いの「ベース」が明確に決まっていました。
讃岐では、四国リーグやJFLの時から、守備時は4-4-2で強固なブロックを引くというスタイルを作りました。
私の監督としての特徴、あるいは弱点だったのかもしれませんが、必ず勝点が取りたい試合や、絶対に負けられない試合になると、自然と攻撃的ではなく、極めて守備的、保守的になってしまう。
失点をゼロに抑えることこそが、勝点獲得への最短距離だと本能的に知っていたからです。

この守備的なベースは、長い間私がやっていたものですから、もはや讃岐の「伝統」として選手たちに染み付いていました。
木島兄弟をはじめ、一見守備が苦手に見える選手でも、試合が危なくなると自然に、ガムシャラに自陣ゴール前まで戻って守備をする。
それは戦術以前の、チームとしての危機感とDNAになっていたのです。

新人監督の頃だったと思いますが、あるキャンプの時に、Jリーグで数々の実績を残された小林伸二さんに、どんなトレーニングをすれば良いのか聞いたことがあります。

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