多分、このブログを訪れる人は、女子サッカーを見た事がない、若しくは興味がない人がほとんどでは無いだろうか。
自分も去年までは「なでしこリーグ」を見た事も無ければ、見ようとすら思わなかったから。
女子サッカーに興味がない人も今回は、少しだけ、お付き合い下さい。
女子サッカーの洗礼は初日に起こった。
何気無く、いつものようにペットボトルの水を口に含んで、ペッと吐いたら、一斉に白い目で見られたのだ。
そして「汚いからやめて下さい。」という関東弁での冷めたい一言。泣
試合中はもちろん、練習中もウガイしてピッチに水を吐くわ、唾も吐く。
男子は、それが当たり前だったのに、女子の世界では「御法度」なのだ。
他にも男子サッカーには無い、不思議な風習をたくさん見たりする。
試合前のウォーミングアップの前にグランドを何周もグルグル走っているのだ。
それも結構なスピードで走っているので、試合前に疲れてしまうのではないかと、こちらが心配になる。
ピッチに入る前に、オールブラックスの『ハカ』の如く、数人が真剣な眼差しで、ZUMBAを踊り出したのを見た時は度肝を抜かれた。
まぁ他にも色々あるのだが、いつ誰が初めて、何の効果があるのかは謎である。
女子サッカーは男子に比べ、スピードやパワーが無く、迫力がない。
そんなイメージを持っていると思うが、その通りで筋量が少ない女子選手は動きの迫力に欠ける。
長年、Jリーガーのプレーを直近に見ていたのだから、男子選手と女子選手の比較は日本でも3本の指に入るだろう。あとの2本は誰か知らないが。
リーグ戦も半分が終わったので、日本のトップレベルの女子選手は、ほぼ全員を見たと思う。
もちろん「なでしこリーグ」の中では速い選手もいるが、前田大然 や ドゥンビアに、ピッチの真横でチギられるのを見た経験を持っている自分にはインパクトは与えられない。
サッカーの魅力は、いろいろとある思う。バルサのポジショナルプレーやリバプールのプレッシングなど組織力を見るのも楽しいが、ファンを魅了するのはメッシだったりロナウドのような強烈な個の力なのだと思う。
女子サッカー選手は「そこそこ上手い」ユーティリティーな選手はいるが、強烈な個の力を持った選手が少なく、『職人』と呼ばれる選手がいない。・・・と思う。
「大きい、ヘディングの強いポストプレイヤー」だったり、狂犬のような「守備専門の潰し屋」、凄い角度からでも「クロスを蹴れるクロッサー」など男子のチームにはレベルは違えど、必ずいるはずだ。
男子のような、特徴のあるチームが作れないのは、『職人』がいないのが原因なのかもしれない。
「なでしこジャパン」に入るような選手は、他の選手とは違うが、傑出した特徴を持っている選手は少ないと感じる。
Jリーグが誕生して27年になるが、劇的にサッカーのレベルが上がったのは、間違いなく育成年代の普及と強化と指導者のレベルアップだと思う。
当時、育成年代の指導者をしていた自分は、他のクラブはもとより、高体連の先生方とも積極的に交流を持ち、選手の将来像について教えを蒙った。
そこで言われていたのが『スペシャルな選手』の育成だった。
「なでしこジャパン」が世界王者になって9年になる。
それから、どのような強化をして来たのか自分は知らない。
知らないからこそ、疑問や不思議なことが多いのは事実だ。
前途したが、女子選手は筋量が少なくパワーが劣る。しかも、少ないパワーを地面に伝える動き方、走り方をしていない選手が多い。
それが初速に影響して、見た目にもスピード感を感じない原因だ。
もちろん、男子選手並みに、パワーをうまく地面に伝える走り方をしている選手も中にはいる。
現在「なでしこリーグ」の上位4チームを見ると、ギャラクティカのINAC神戸を除けば今後の女子サッカーのあり方が見えてくる。
日テレ・ベレーザは言うまでもないが、浦和レディース、C大阪レディースは下部組織からの昇格選手が多い。
特にC大阪レディースはチームそのものがカテゴリーを上げてきており、戦い方も戦術的で洗礼されている。
9年前に世界王者になり、サッカーをする女性は増えた。そこに前記したJクラブの4チームは若年層からの育成・強化に成功して結果に現れている。
それぞれのクラブが、男子サッカーの育成指導ノウハウを、女子サッカーにも取り入れているのが、今の順位に現れているのだと思う。
クラブの色を持った、一貫した育成型チームが女子サッカー界をリードして行くのではないだろうか。
身体能力以外に、男子選手との違いを感じるのは、女子選手は自分を表現するのが苦手なのかと思う事だ。
「和を重んじる」日本人女性特有の気質であるのか、団体の中で周りの目を気にし過ぎるのか、強烈なパーソナリティを持つ選手が少ない。
そして、試合中の表情が硬い。もっとサッカーを楽しめば良いのにと思ってしまう。
『笑顔』が少なく、ただ愚直にサッカーをプレーしているだけに見えてしまう。
男子でいえばアンダー15世代の選手のようだ。
真面目に一生懸命だけで、まだまだ相手との駆け引きを楽しめない、子供の試合中の顔を思い出す。
サッカーの楽しさはグループで、チームで相手と駆け引きをして、最終的に勝利を目指すものだ。
言われた事だけしか出来ないのでは楽しめない。
その場で、自分の判断を伴ったプレーを選択しなければならないのだ。
相手との駆け引きをする楽しさを覚えれば、自然と表情も変わると思う。
例え、攻められて守り一辺倒になっていても相手に対して「来てみろ」という余裕が出てくるものだ。
サッカーという競技が持つ、本当の楽しさを理解すれば「やらされてる感」よりもチャレンジする感情が表に出て、試合中も硬い表情にならないのでは無いだろうか。
その楽しさの先に勝ち負けがあり、見ている人を惹きつけるプレーが出来るのだと思う。
「なでしこリーグ」は全試合YouTubeで配信されていて、全世界の人が観れる。
選手達は見られていることを、もっと意識して、サッカーを楽しめば良いのにと思う。
選手がサッカーの楽しさを知らずに指導者になったりしたら、ずっとクリエイティブな選手は育てられない。
女子サッカーの未来の為にも、現役選手には本当のサッカーの楽しみと厳しさを知って頑張って貰いたい。
WEリーグが成功するには一貫した育成組織の充実と指導者のレベルアップは必須だ。Jリーグがそれを証明している。
自分が今シーズン、女子サッカーを指導するにあたり、国民栄誉賞の大先輩からのアドバイスは「サッカーを教えてやれ」だった。
今日も自分は女子サッカー選手にサッカーの楽しさを伝えるために頑張っている。と思う。たぶん・・・。
日本女子サッカーは世界王者になったが人気は低迷している。
だが戦術的に変わってきているのは確かだ。選手の意識が変われば化ける可能性は秘めている。
スピードや迫力は劣るかも知れないが逆に、試合の戦い方はスピードがないからこそ、分かりやすいと思う。
騙されたと思ってスタジアムに足を運んで試合を観て欲しい。
ただ、本当に騙されたと思ったとしても当方は一切責任は取らないが。
因みにではあるが、女子サッカー選手は夏の暑い日は、帽子を被り、長袖で手袋をして練習をする。
そして日焼け止めクリームをたっぷり塗っているので、白い顔に玉のような汗が転がっている。