今シーズン、日本人だけで構成されているチームはあるのだろうか。
讃岐にいた時の外国籍選手はフランス人、ブラジル人、韓国人がいた。
しかしクラブの予算の関係上、通訳は9年間で一人もいなかった。
韓国人の選手は日本に来る前に日本語の勉強をするようで直ぐに話せる選手が多かったので会話には困らなかった。
ブラジル人選手はというとJリーグにはブラジル人選手が多いので、日本人の方が少しポルトガル語を理解しているのでコミュニケーションは取れる。
だが、フランス語はわからなかった。
フラ語といえば『ゴールデンエッグス』の家庭教師ミシェルしか思いつかない。
それでもサッカーは世界のスポーツなのでなんとかコミュニケーションは取れていたと思う。
だが、本当に取れていたと思うのはコチラだけだったのかも知れない。
FC岐阜にはブラジル2人、スペイン、ニュージーランド、ドイツ、ガボン、韓国と7人もの外国籍選手がいた。
FC岐阜には 木村 大樹 と 渥美 高二 2人の通訳がいたのだが、内訳は英語圏とラテン語圏だ。
ミーティングの時が面白い。
右側に木村と英語圏選手、中央が日本人選手、左側に渥美とラテン語圏選手と分かれて座る。
自分が話を始めると同時通訳が始まるので、まるでスピーカーのようにそれぞれから違う言語が聞こえてくるのだ。
ミーティングの話し方は高揚をつけるので、自分の話す強弱が自分の耳に左右から返って来る。
まるで俺はオーケストラの指揮者のようだと、ひとり思っていた。
サッカークラブの通訳の仕事はグラウンドだけではない。
外国人選手の日常の生活もフォローしなければならない。
文化の違う国に来ているのだから問題は必ず起きるので、彼らの仕事は24時間体制なのである。
子供が熱を出した、何かの集金が来た、部屋の電灯が切れたなどの電話があるので、常に連絡を取れるようにしておかなければならない。
選手と通訳は信頼関係がなければ選手も良いパフォーマンスを出せないのでチームにとっては重要な役割だ。
7人もいれば登録の関係上、試合に関わらない選手が出てくる。
18人の登録から漏れた選手に対してモチベーションを落とさせないようにコミュニケーションを取らなければならない。
日本人選手も同じなのだが、彼らは助っ人外国人選手なのだ。
日本人選手よりもプライドが高いので、しっかりと説明しなければならない。
自分と選手の間に入るのが通訳なのだから監督と通訳の関係性も大事だった。
幸い、二人の通訳との関係性も短時間で良好となり信頼してくれたので感謝している。
監督が外国人の場合は通訳はさらに大変だろう。
監督の考えを正確に、タイムリーに選手たちに伝えなければならない。
監督と選手のお互いが感情的になる試合や練習中は間に挟まれるのだから大変だ。
語学が出来ても、監督のサッカーを理解しておかないと出来ない仕事なのだと思う。
みんな大好きなコンサドーレ札幌のミハイロ・ペドロヴィッチ監督のコーチ兼通訳は杉浦 大輔氏である。
ミシャ監督のやり方であれば日本で一番理解している人物だ。
将来的にどのような道を歩んで行くかは聞いた事がないので分からないが、ミシャ式の考え方は杉浦氏がもっとも知っているだろう。
そして彼はとても肝の座っている人物なのだ。
何年前かは忘れたがキックオフカンファレンスの時だった。
ミシャ監督と話をする機会があり、自分なりに疑問に思っていることを質問してみた。
集合時間の10分くらい前だったと思うのだが、質問したことを丁寧に答えてくれただけではなくオマエはどう思っているのかと逆に質問された。
もちろん杉浦氏の通訳を通してだ。
刻一刻と集合時間が近づいているというのに話は終わらない。
Jリーグの人が呼びにきたのだがミシャ監督の話は続く。
「集合時間です」とJリーグの人が声をかけたと同時に杉浦氏はサッと右腕で制し「今、大事な話をしているから」と一蹴してしまった。
慌てたのは小物監督の自分である。
強張った顔で少し後ろに立っているJリーグの人にペコペコしながらミシャ監督の話を聞くが、頭に半分も入らず脇汗をかいていた。
結局、10分ほど遅れて会場に入ったのはカンファレンス本番の直前だった。
ドーンとソファーに座って目を直視して話すミシャ監督と淡々と通訳する杉浦氏の姿は大物感が半端なかったのを覚えている。
先日、新年の挨拶がてら杉浦氏と『女子でもミシャ式は出来るか』とラインでやり取りをしたのだが、さすがはミシャ監督と一心同体の男である。
幅と深さの話から的確なアドバイスを貰った。
そして『今年は常識破りの超攻撃サッカーで女子サッカーに風穴開けてください!』という恐ろしい難題のコメントを最後に頂いた。
基本的に通訳ができる人というのは相当、頭の回転が速いのだろう。
世界的な監督だとジョゼ・モウリーニョもボビーロブソンの通訳を務めていた。
日本でも通訳出身の監督も増えてきた。
最近ではオシムさんの通訳だった間瀬 秀一さんがJリーグの監督だった。
レノファ山口の元監督 霜田 正浩さんも通訳出身だ。
優秀な外国人監督と四六時中ともにするのだからサッカーは学べるはずだ。
将来的に通訳ではなく指導者を目指しているならば、すごく良い環境なのは間違いない。
トップトップの監督になるには資質やパーソナリティが重要だが、サッカーの知識やノウハウを間近に吸収できるのは羨ましい限りだ。
サッカーはグローバルで、どんどん進化していくスポーツだ。
その最先端はやはりヨーロッパなので、語学習得は優秀な指導者への近道になって来るはずだ。
ちなみにではあるが、真夏の炎天下でブラジル人選手に説教をした事がある。
立ちながら面と向かって話すと長身のブラジル人選手に見下ろされてしまう。
そこで自分はベンチに深く座りブラジル人選手をその前に立たせて説教をしたのだ。
生活態度、プレーの怠慢さなどを1時間ほど炎天下で、ねっちりと説教をした。
神妙な顔で涙を浮かべながら聞いていたブラジル人選手は心を入れ替え元気に練習に戻った。
だが、通訳をしていた日本語のできるブラジル選手は体調を崩し、練習を休んでしまった。
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