嵐の二宮くんが「ガチだからねぇ」とゲームをやっているCMを見ると共感を覚える。
何を隠そう、自分はポケモンGOをガチでやっているポケモンマスターなのだ。
日本全国のアウエイの地を巡りながらiPhoneの画面をクルクル回している。ホテルの部屋からポケスポやジムが入るようなら妙にテンションが上がる。
選手もサポーターもガチになる試合がある。
サッカー不毛の地である故郷・香川県にJリーグを作るという思いだけで監督になった。
今でこそバドミントンの世界チャンピオン 桃田 賢斗選手が香川県出身として活躍しているが、そもそも香川県にスポーツ文化は無かった。
県庁や市役所にスポーツ関連の懸垂幕が設置されるのを見た事がなかった。
香川県と岡山県のテレビは「岡高地区」という特殊な事情から、海を挟んだ2つの県が一つの放送エリアとなっているので、四国の他県よりも岡山県の情報が分かる。
岡山県はスポーツが盛んで、誰それが世界選手権に出場した、オリンピック代表選手になったというニュースがテレビで流れ、岡山県庁に懸垂幕が設置される映像をよく見た。
そして岡山県にはJリーグ『ファジアーノ岡山』がある。
夕方のスポーツコーナーは必ず『ファジアーノ岡山』からスタートするのだ。
そして、いよいよ香川県庁に懸垂幕が設置される日が訪れた。
ガイナーレ鳥取との入れ替え戦を制し、『カマタマーレ讃岐 Jリーグ昇格』の懸垂幕が県庁の屋上から設置されたのだ。
入れ替え戦のインタビューで「これでファジアーノ岡山とダービーマッチが出来る」と話した。
サッカー不毛の地、香川県を盛り上げる為にはテレビの協力が不可欠だ。
2つの県が一つの放送エリアだからこそ、サッカーファン以外の人の目にも入るのだ。
それぞれのテレビ局の皆さんも『瀬戸大橋ダービー』を取り上げて頂き、大いに盛り上がった。
当時のファジアーノ岡山は同級生 影山 雅永 監督。
見た目が自分と真逆な「品性高潔」を絵に描いたような監督なのだ。
これは完全にヒールを演じるしかないと思った自分はテレビで煽りに煽った。
「勝った方が夕方のスポーツニュースの頭にして下さい。岡山には絶対に勝ちますよ。」
などと言ったもんだから当時のkankoスタジアムで、バスを降りる瞬間に大ブーイングを浴びてしまった。
結局、次の 長澤 徹 監督も影山監督と同じ「品性高潔」タイプだったので最後までヒールを演じ続けた。
試合内容が白熱したのは間違いなくファン・サポーターのおかげだ。熱気がもの凄かったのを思い出す。
ファジアーノの選手達は分からないが、カマタマーレの選手達は相当気合が入っていた。
当然、自分も順位関係なく、ここだけは落とす事はできないと必死で準備をしたものだ。
サポーターの皆さんに、よく聞かれるシティライトスタジアムで対戦した時の「ワイドトップ」は名付けて『岩政放置作戦』だ。
マンマークの対人に強い岩政選手に、あえてマークをさせない立ち位置を取るようにした。
そうすると、どうなるかは試合の通りだ。
先に点を取られて難しくなったが、狙い通りに試合は動き、見ている人には面白い試合が出来たのではないかと思っている。
確かあの試合は、中3日と準備する時間が少なかったのだが、そこは両県のファン・サポーターが楽しみにしているダービーマッチである。
下手な試合は見せられない。予め作戦は練っていて、岩政選手が累積で出場停止にならない事だけを祈っていた。
「瀬戸大橋ダービー」は盛り上がったが、自分の中ではファジアーノ岡山はライバルとは思っていない。
クラブの規模が違いすぎるのは当然だが、ファジアーノ岡山があったからこそ香川県にサッカーが普及したのだと思っているからだ。
ロアッソ熊本の監督で岡山を訪れた時、地元メディアは自分が香川県出身ということも知らなかった。
影山監督とは友人だったので、地域リーグの時から練習試合をして、時にはピッチを狭くして練習要素の強い8対8の試合もお願いした。
そして何より、香川県の人達に地元のチームを応援するという事を教えてくれたと思っている。
敢えてヒールになった甲斐があったものだ。何度も言うが、敢えてである。
自分の勝手な思いだがファジアーノ・サポーターもダービーを楽しんでくれたはずだ。
香川県から岡山県は近く、車でもバイクでも瀬戸大橋ですぐだ。
たまに倉敷のアウトレットやアリオへ買い物に行くと、サッカー少年ぽい子供達がコソコソと話している。
「あれカマタマーレの監督だ。悪そー。」
もう一度言うが、敢えてヒールを演じていたのである・・・。
しかし昨年、FC岐阜の監督でシティライトスタジアムの場内アナウンスで紹介された時に、スタンドから拍手をされたのは驚いた。
岐阜の選手達は、なぜ拍手をされたのか聞いて来たが自分自身も謎だった。
その試合は、共にカマタマーレ讃岐で「瀬戸大橋ダービー」を戦ったはずの「ファジアーノ岡山の 仲間隼斗」 にキッチリ決められてしまうオチだった。
「瀬戸大橋ダービー」は 原 一樹 の芸術的なループシュートなど名場面はいくつもある。
しかし、鮮明に覚えているのは、終了間際にPKを与えた 山本 翔平がロッカルームで、みんなに責められ、いじり倒す 木島兄弟 に懸命に言い訳をしている姿だ。