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冒険の終わりに見えたもの 最終章

女子選手は純粋にサッカーが好きなのだと思う。

ほとんどの女子選手は「お兄ちゃんがしてたから」という動機でサッカーを始めたらしい。

子供の頃から身近にサッカーがありボールを蹴っていたのだから強制的に始めた訳では無いと思う。

サッカーをする本当の楽しさは初めてボールを蹴った喜びであったり、初めてゴールを決めた瞬間が原点だ。

誰かに強制されるのではなく自分で考えて判断するのが楽しいのだ。

ピッチで自分を表現する事に関しては男子選手よりも少ない。

どの過程で大人しくなっていくのか。

そもそも『なでしこ』という名前のせいなのかと思ってしまうほど大人しい選手は多い。

※『やまとなでしこ』日本女性の清楚で凛とした美しさを讃える言葉で教養と気品を備え、奥ゆかしく控えめ・・・

古参の男性フロントスタッフが言っていた言葉が忘れられない。

「女子サッカーは健気に頑張るところが良い。だからJリーグより女子サッカーなんだよな」

初めて女子サッカークラブのクラブハウスに来た日だった。

「いやいや男子かて健気に頑張ってるで」

そう心の中で突っ込んだが初対面なので口に出す事はしなかった。

もしかすると多くの人たちは女子サッカー、選手をそう見ているのかも知れない。

だが彼女たちはプロでありアスリートなのだ。

彼女たち自身もそんな風に見られたく無いと思っているはずだ。

言われたことしか出来ないのかと思うほどチャレンジしようとしない試合や練習が続いたのでミーティングで『ロベルトノート52ページ』を見せた事がある。

もちろんこの時には新しいチームとなり選手たちとは打ち解けている関係になっている。

「なっ、ロベルト本郷も言うてるやろ。サッカーって自由なんやで」

リラックスした表情の選手たちは

「そうか自由か」

などと口に出していたがほとんどの選手は『ロベルト本郷って誰やねん』と思っていたはずだ。

徐々にではあるがピッチの上で選手同士の会話が増えた。

その会話も現象の話ではなく原因について話しているのだ。

以前は『こういう時はこうして欲しい』と今、起きたプレーの事しか話せなかった選手が『こうなりそうな時はこうして欲しい』とプレーの根本を話せるようになった。

こんな会話を聞き耳している時は指導者冥利に尽きるもので選手たちが成長しているのが嬉しい。

ピッチの上だけではなく練習が終わってクラブハウスの出入り口でも何人かの選手でプレーの事を話していた。

その会話はちょうど男が唯一、着替えができる6畳ほどの狭いスタッフのロッカーにいると聞こえて来る。

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