以前『大和撫子七変化』でも書いたが、女子サッカー選手の名前を自分はさっぱり知らない。対戦相手のミーティングの時も、作戦ボードのマグネットを動かしながら「10番の・・・。なんて名前やったっけ?」と選手に聞いてしまうくらいだ。まるで松木安太郎さんのテレビ解説のように背番号を連呼してしまう。
そんな自分でもアイナック神戸には知ってる選手がいる。鮫島 彩選手、中島 依美選手、岩渕 真奈選手は言わずと知れた、FIFA女子ワールドカップの優勝メンバーだ。女子サッカーに興味がなかった自分だが、この時ばかりはテレビで観て感動したのを覚えている。
そんな偉大な選手を擁すアイナック神戸との対戦である。男子サッカーに例えるなら世界チャンピオンになったスペイン代表選手が3人もいるチームと対戦するのだ。同じ神戸をホームタウンとするヴィッセル神戸と対戦するのと同じなのだと、強引に仮定をしてモチベーションを高める自分がいた 笑
偶然なのか必然なのか、週末の準備を進めている時に 海と月社 様から一冊の本を献本頂いた。
元女子サッカーアメリカ代表の アビー・ワンバックと言ったらゴールを量産するゴツいストライカーだ。
この本には「名言」が多く、女性が読めば間違いなく、男の自分よりメンタルの強い人間になると思うので女性アスリートにはお薦めかもしれない。また、女子サッカー選手が読む本は少ないと思うので、是非この本を読んで貰いたい。
何故だかこの週は頭の中がワールドな、女子サッカーになってしまったわけだが、現実に戻りアイナック神戸戦を準備しなければならない。正直、ベレーザやアイナックは対策しやすい。誤解しないで貰いたいが、対策しやすいというのは勝ちやすいではない。
分析ができるという事は、すなわち、チームとして「何をやりたいのか」が見えるという事だ。チームとして『やること』を示しても個々の選手の能力がなくては『やること』はできない。ベレーザとアイナックは選手の能力も高いという事だ。
しかし、能力が高い選手は癖も強いので、その癖を見つけるのは面白い。そのプレーの癖を逆手に取れば良いわけだ。例えば左利きの選手がボールを持った時に、左足の前に立つと何処に、どういうパスを狙うのかが分かっていればディフェンダーはインターセプトを狙いやすい。ボールタッチの癖も同じだ。
そんな事を色々と考えながら試合映像を見て分析をして行くのだが、実際の試合では自分が思ってた以上にスピードがあったり、パワーがあったりすると簡単に剥がされてしまうことがある。こうなれば自己満足の机上の理論で終わってしまう。
女子サッカーを変えると意気込んだが、やはりパワー、スピードは男子サッカーには太刀打ち出来ない。ならば女子サッカーは何を魅力にするかを考えなければならない。男子サッカーに劣らずに太刀打ちできるのは正確性とイマジネーションだと思う。ここを拘って行くことが日本女子サッカーが、また世界の強豪に返り咲く術だと思う。
『男子に例えるスペイン代表を擁すアイナック神戸』との対戦は、勝つチャンスはあったが引き分けという結果となった。ジョルディ・アルバ、ブスケッツ、セスクを抑えることが出来たのは正確性とイマジネーションを持つチャビとイニエスタが居なかったからである 笑
再び、チャビとイニエスタ・・・もとい、澤 穂希と宮間 あや が現れるのを待つのか、それとも作り出すのか。
天才を作り出す事は出来ない。ならば、天才が現れやすい環境を整えることが、日本の女子サッカー界には必要だ。しかし、今の閉ざされた枠組みの中では難しいと思う。
狙った試合で、またしても勝ちきれなかった我がチーム。徐々に戦術理解力は高くなって来たが、結果が伴わない。しかし今年、いつもミーティングに選手達に言っている事は『next game』。勝っても、負けても、引き分けても最高の試合は次の試合だ。
ちなみに試合後、記者会見室を出た時に鮫島選手がいたので「鮫島さん、速いね。俺が思っていたよりスピードがあったわ。」と言うと、「いやいや、めちゃくちゃ遅いですよ。」と答えられた。
それだけの会話を交わしただけだったが、後で思うと話しかけたのは中島選手だったのかもしれない・・・。結局のところ知っていると言っても、名前と顔が一致していないのだ 笑